研究概要 |
成犬実験により以下の成績を得た. 1.リピオドール・フィブリン糊(Lpfibrin糊)による門脈塞栓術後の剔出肝の病理学的検討:塞栓直後, 1・2・4週後に使用成犬を屠殺し検討を加えた. 赤色調の僅かなゼラチン様物質が肝門部門脈内腔にみられ, 門脈塞栓状態を保っていた成犬では塞栓物質が内脈内腔に充満していたが, 塞栓物質は門脈内皮と接着していないか, 接着している場合でもその程度及び範囲は軽度で, 容易に用手的剥離が可能であった. 非充満例では塞栓物質が部分的に門脈壁と接着している個所を認める例もあったが, 内腔に充満している例は無かった. 組織学的には, 門脈内腔にHE染色で比較的均質な淡紅色に染色される線維素塊を認, この線維素塊内部にはリピオドール滴が散在しており, 赤血球が混在している例もみられた. 塞栓直後には門脈内腔は線維素塊によりほぼ閉塞されており, 血管造影で閉塞状態が確認された例では器質化を伴う線維素塊が内腔にほぼ充満して残存しており, 開通例では器質化を伴なう線維素塊は少量が残存するか, あるいは全く認めず内腔充満程度は不充分であった. 残存する線維素塊は辺縁部で大食細胞の浸潤, 類上質裁縫と紡錘形細胞の増生, 膠原線維の増殖を伴う器質化がみられた. 内脈壁およびその周囲組織には大食細胞とリンパ球の浸潤をみる例があったが, 壁構造の破壊は認められなかった. 2.リピオドール・イソブチルー2-シアノアクリレート(Lp-IBC)による永続的門脈塞栓術の基礎的決闘:血管カテーテルから門脈内注入によりLp-IBCはカテーテル先端から比較的みずかい区間を塞栓した. その間脈塞栓持続状態は術後4週間後まで持続しており, Lp-IBC自体の量の減少もなく塞栓術後と同様の範囲が塞栓されていた. また肝機能は術後2〜3日, 一過性のGOTの軽度上昇がみられたが, Ch-E, T-Bilの変動は軽微であった.
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