研究概要 |
感情障害の成因仮説としてアミン仮説, GABA仮説などが提唱されているがなお多くの矛盾を含み意見の統一をみていないのが現状である. うつ病者では身体的不快感, 痛みを訴えることは多い. 抗うつ薬は鎮痛作用を有し, 強い抑うつ症状に適用される電気ショック療法はエンドルフィン作動系を賦活する. このような事実はうつ病におけるエンドルフィン作動系の変異を推察させる. 本研究では感情障害におけるエンドルフィン作動系の関与を明らかにするためにイミプラミン(IMI), クロジプラミン(CLO), シアンセリン(MIA)のラット脳内エンドルフィン作動系への影響を検討した. その結果1.IMI急性投与により前頭葉皮質, 大脳辺縁領域, 線条体, 海馬, 視床下部でメチオニンエンケファリン免疫活性(Met-Enk-Imm)に変化はなく視床で増加した. 2.40日間にわたる経口的慢性投与実験において(1)痛覚閾値は投与開祖11日目までは上昇していたが, 長期投与では閾値上昇は消失しCIOではむしろ低下した. (2)Met-Enk-Immは前頭葉皮質で変化しなかったが辺縁領域, 線条体ではCLO, MIAの投与で有意に減少し, IMIでも減少傾向を認めた. 海馬では反対にCLO,MIAの投与で有意な増加を認めた. (3)オピオイド受容体, 前頭葉皮質の^3H-DAGO,^3H-DADLE結合はほとんど変化しなかったが辺縁領域の^3H-DAGO,^3-DADLE結合は抗うつ薬大量投与で有意に減少した. 線条体のそれらもIMIおよびMIA投与で減少した. IMI投与ラットの線条体のμ-およびδ-受容体結合量の減少はScatchard解析からBmaxおよびKdが共に変化することが推察された. 以上の所見は抗うつ薬慢性投与は大脳辺縁領域および線条体のμおよびδオピオイト作動系の機能低下をもたらし, 海馬のエンドルフィン作動系に対しては逆方向に作用している可能性を示唆する. D_2受容体の特異的遮断薬であるsulpinideの少量投与は抗うつ作用を示す事からDAとコレシストキニンの関連について検索している.
|