研究概要 |
65歳以上の睡眠時無呼吸不眠症候群10名(全員男性, 平均70.7歳)で, 性格検査および知能検査を施行した. その結果, MMPIでは, Hs・D・Hy・Pt・Scの5尺度が, 正常男性群および無呼吸男性群(睡眠障害の訴えのない)よりも有意に上昇し, WAISで言語性IQと全検査IQが正常男性群および無呼吸男性群よりも有意に低下していた. ちなみに, 睡眠時無呼吸不眠症候群の言語性IQは平均86.0, 全検査IQは85.3であった. さらに, 痴呆老人14名(男8名, 女6名, 平均69.4歳)にWAISとPSGを施行した. WAISの結果, 全検査IQが60-69と知的欠陥レベルにある者7名(男5名, 女2名, 平均74.1歳)を準痴呆群, 全検査IQが59以下と痴呆が顕著な者7名(男3名, 女4名, 平均64.6歳)を痴呆群とし, 健康老人と比較検討した. 痴呆群7名中4名は, 臨床症状, 神経学的所見, CT所見から, アルツハイマー病であることがほぼ確実である. PSGの結果, 準痴呆群7名中3名は, 睡眠時無呼吸症候群の診断基準を満たしたが, 痴呆群7名では睡眠時無呼吸症候群の診断基準を満たす者はみられなかった. 正常男性群および女性群, 無呼吸男性群, 睡眠時無呼吸不眠症候群と比較検討したが, 睡眠時無呼吸に関する諸変数, 睡眠構築に関する諸変数とも有意差はみられなかった. 以上より, 睡眠時無呼吸は夜間の低酸素血症の蓄積により, 軽度の知的機能低下と関連を有している可能性があると推察されるが, アルツハイマー病のような, 明らかな病的老化とは関連性が低いと思われた. 今後, さらに症例数を増やし, より詳細な分析を行いたい. また, 睡眠時無呼吸症候群の治療上の新しい試みとして, 口蓋垂・軟口蓋・咽頭形成術(UPPP)を睡眠時無呼吸過眠症候群の患者(52歳, 男性)に施行し, 術後, 無呼吸の持続時間が有意に短縮し, いびき, 日中の眠気などの自覚症状の改善もみられた.
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