研究概要 |
61年度は主にニホンザルを対象に脳内カテコールアミン系, サブスタンスア系を免疫組織化学的に検討したが, 62年度では正常対照ヒトの死後脳においても上記神経系を検索すると共に, サルやヒト対照脳においてコリンアセチル転移酵素やソマトスタチンに関する免疫組織化学を実施した. その結果興味ある事実が判明し, 我々はその一部を62年第二回世界神経科学会議などにおいて発表した. サル終脳においてカテコールアミン系とペプチド系の神経支配様式で相違が認められ, そのようなことは特に新皮質において顕著であった. 両ペプチド(サブスタンスPとソマトスタチン)神経系は, むしろ既にサルで報告されているアセチルコリン系の大脳皮質支配に類似し, 皮質表層で終末様のペプチド含有線維が濃厚に分布していた. また, 両ペプチド系間を比較すると大脳皮質深部で細胞体や終末の分布様式に相違が存在し, 霊長類新皮質支配におけるペプチドの関与は複雑であることが示唆された. ほぼ同様なペプチド系支配様式がヒト正常脳においても観察され, それらは霊長類全般の特徴とも考えられた. その他, ヒトやサルの終脳辺縁領域の海馬体や偏桃核においてもペプチド神経系に特徴的な線維の分布が認められ, カテコールアミン系やアセチルコリン系のそれと異なっているように思われた. 現在, 正常対照脳と慢性精神分裂病脳において上記神経機構を検索中である.
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