研究概要 |
MHBAAの脳室内注入という当初の研究計画から脳橋背側部への微量投与実験に変更したが、これは同部位へ抗コリンエスレラーゼ作用のあるネオスチグミンを注入して、レム睡眠類似状態を確認することで、MHBAAのレム睡眠増加作用をより直接的に証明しようと考えたからである。 午前6時〜午後6時明期、午後6時〜翌午前6時暗期の明暗飼育条件下で4週間以上飼い慣らされた体重3〜5kgの雄猫10匹について、ネンブタール麻酔下で、脳波記録用の電極(表面脳波、眼球運動図)および薬物投与カニューレ(直径.6mm)を所定の座標(P=3、L=1.5、H=-5.5、Berman;脳橋背側部)に植え込み慢性ネコを作った。手術2週間後、午前10時にガイドカニューレ内に投与カニューレ(直径.3mm)を挿入し、1分間以上の時間をかけて生理食塩水250nlを投与し、投与カニューレ抜去後はガイドカニューレ内にストッパーを挿入し、脳波測定を行った。24時間の睡眠覚醒パラメータを測定後、午前10時同部位にMHBAA250nlを注入し48時間の脳波観察を行った。実験の手技上の問題、投与した合成MHBAAの安定性の問題から本報告では4匹の結果を検討する。そして、各パラメータについて生理食塩水投与時とMHBAA投与時と比較した。 MHBAA微量注入(683nl)後睡眠潜時は有意に短縮した(生食水対MHBAA,34.3分±8.3,21.4±6.5,P<0.02)が、レム睡眠潜時は短縮する傾向を示すだけだった。投与後24時間の観察では睡眠量が増加(レム睡眠量の増加)した。1時間毎の覚醒段階の有意な減少は投与後1、6、21時間、徐波睡眠出現率の有意な増加は15、18時間後で認められたが、レム睡眠出現率の有意な増加は投与後1、3、6、15時間であった。ネオスチグミン(20μg)投与で、レム睡眠類似状態を観察しているので、MHBAAのレム睡眠誘発作用が生物学的に証明された。
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