研究概要 |
昭和61年度に実施した合成MHBAA(683nl)の脳橋背側部への微量投与実験[明期(10:00)の注入]では, 投与後6時間のレム睡眠出現率が, 生理食塩水投与時より有意に増加していた. また24時間全体でも, レム睡眠出現率が増加する傾向であった. 以上から外因性MHBAAにレム睡眠誘発作用のあることが, 不十分ながらも確かめられたが, 昭和62年度ではネコの生体リズムを考慮して, MHBAAのレム睡眠誘発作用の時間生物学的検討を行う努力をした. すなわち同量のMHBAAを, 午前6時〜午後6時明期, 午後6時〜翌午前6時暗期の明暗飼育条件下[LD=12:12]で4週間以上飼い慣らした体重3〜5kgの雄猫5匹に対して, 主として暗期(22:00あるには04:00)に脳橋背側部[座標(F=3,L=1.5,E=-5.5,Berman)]へ, 慢性植え込みカニューレ(直径.6mm)から微量注入した. 注入後は24時間の脳波観察(表面脳波, 眼球運動図, 筋電図)を行い, 生理食塩水(250nl)注入時の対照値と比較した. 暗期のMHBAA微量注入(683nl)では, 明らかなレム睡眠増加がないものゝ, 多少増える傾向であった. しかし24時間全体では, 明期(10:00)投与で認められたような一定の傾向が得られなかった. 本年度の暗期投与は, ネオスチグミン投与で, レム睡眠類似状態を観察してはいるが, 明期投与で認められたような, 明らかなレム睡眠誘発作用は得られなかった. このような2年間の結果からMHBAAのレム睡眠誘発作用に明暗要因が関連する可能性が示唆されたが, 本年度の結果は, ネコの個体差によるものなのか, 暗期に投与したことで, 内因性MHBAAと何らかの影響を受けたものなのか, 脳橋背側部への繰り返し微量注入により器質的変化が起こったことによるものなのか, いくつか検討しなければならない問題点が残された.
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