研究課題
インスリン依存性糖尿病(IDDM)が免疫異常によって発症し、免疫修飾剤の1つであるOK-432が糖尿病の発症を防止することをNODマウスで実証した。免疫抑制剤の1つであるサイクロスポリンAは副作用のため臨床応用の可能性は全くない。そこでOK-432の臨床応用を考慮して以下の実験をおこなった。これまでOK-432の副作用は注射時の発熱以外に殆どなく40歳未満755名の調査でも肝障害は5名(0.6%)、腎障害例は0である。5歳から15歳までの糖尿病患者5名についてHLA、ICSAを測定し、【DR^4】DR9のいずれかが陽性で、ICSA陽性の症例およびいずれにも該当しないものについてOK4320.2KE皮内注射し、漸増し1.0〜2.0KEを週1回注射し、3ケ月観察した。また効果がみとめられる可能性のある症例ではさらに3ケ月継続した。治療中血糖の推移をみてインスリン注射を減量した。膵β細胞機能をみるためグルカゴン1mgを注射し6分後のC-ペプチドを測定し、増加量を算出した。IDDMが発症し、すでにインスリン注射のはじまった症例ではOK-432の効果はなく、緩解導入も出来ず、インスリン注射量を減少させなかった。しかしICSA陽性でDR9がある15歳の症例ではインスリン注射を必要とせず、空腹時血糖が120mg/dだったので3年間経過を追っていた。(昭和58年発病)。Slow IDDMと判断し、昭和61年9月よりOK-432療法を開始した。入院時空腹時血糖が199mg/dlに上昇していたが120〜130mg/dlに安定しOK-432を継続中である。すでにβ細胞が破壊されたものでは効果がない。免疫機構に基づかないIDDMでは効果がない。IDDM発症前に免疫療法をおこなえば予防効果がある可能性がある。OK-432 0.1KE〜0.2KEの注射によって副作用はおこらず、比較的安全であることなどが分ったので、今後さらに本実験をくりかえし、IDDMの新しい治療法を確立したい。
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