研究概要 |
我々はすでに、DOCA-salt高血圧ラットにおける含硫アミノ酸タウリンの投与は、降圧作用を発揮し、その作用が交感神経活動の抑制に基づくことを報告した(研究発表論文参照)。同時に、タウリン投与時には、中枢脳幹部において著明なタウリン含量の増加が認められ、また、タウリンは中枢神経組織においてneuromodulator(神経機能調節因子)として働くことが知られていることから、タウリンの降圧作用機序として中枢神経系を介する交感神経活動の抑制の可能性が推察される。そこで、タウリンの高血圧発症抑制作用ならびに降圧作用機序における内因性オピオイドペプチドの関与の有無について検討するため、オピエートレセプターアンタゴニストのナロキソンを投与し、血圧の変化を観察した。実験1の高血圧発症抑制作用における検討では、DOCA群の収縮期血圧146±3mmHgに対して、タウリン投与群では116±2mmHgと対照群の112±3mmHgとの間に差を認めなかった。また、対照群およびDOCA群では、ナロキソン投与による有意な血圧の変化は認められなかったが、タウリン投与DOCA群では投与前の値から19.1±4.9mmHg,16.7±3.9%と有意な血圧上昇がみられた。実験2のDOCA-salt投与による血圧上昇後のタウリンの降圧作用における検討においても、対照群およびDOCA群では、ナロキソン投与により有意な血圧の変化が認められなかったのに対して、タウリン投与DOCA群では、投与前の値から、31.3±3.5mmHg,28.1±3.3%と有意な血圧上昇が認められた。以上の結果、タウリン投与群ではオピエートレセプターアンタゴニストのナロキソン投与により有意な昇圧反応が認められたことからタウリンの降圧作用ならびに交感神経抑制作用は一部,脳内オピオイドペプチド活性の賦活化を介する可能性が推察された。
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