研究概要 |
インスリンの抗脂肪分解作用はインスリンによりlow km cAMP phosphodiesterase(PDE)が活性化され、CAMPが低下する事によると考えられている。今年度は、このPDEの抗脂肪分解作用に於るPDEの役割につき、新しいPDE inhibitorであるGriseolic Acid(GA)を用いて検討した。方法はラット副睾丸脂肪細胞をKrebs-Henseleit Hepes buffer(2%BSA)pH7.4,37℃でインスリン3nM,GA100μg/ml(低GA),GA1mg/ml(高GA)をそれぞれ単独あるいは同時添加しインキュベートした。KONOらの方法に準じて粗ミクロゾーム分画を得、PDE活性を測定した。PDEに直接GAを添加するとPDE活性は阻害され、その【I_(50)】は0.15μg/mlであった。脂肪細胞にGAを加えインキュベートすると、PDE活性は用量依存性に抑制され、その際CAMPは上昇し、グリセロール放出の増加がみられた。脂肪細胞とインスリンをインキュベートするとPDEは活性化されるが、GAを同時添加すると、低GAでは軽度、高GAでは中等度にPDE活性化の抑制がみられた。このPDE活性化抑制に対応して、GAによるcAMP上昇、及びグリセロール放出に対するインスリンの抑制効果も軽度あるいは中等度抑制された。これらの結果より、PDE阻害の程度に応じて、インスリンによるcAMP低下作用及び抗脂肪分解作用も抑制された。即ち、インスリンの抗脂肪分解作用として、インスリンによるPDE活性化、その結果としてこのcAMP低下作用が重要な役割を演じていると結論された。
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