研究概要 |
主として培養したヒトの成長ホルモン(GH)・プロラクチン(PRL)あるいはACTH産生下垂体腺腫細胞を対象に研究を行った. これらの細胞では, 1)培養液のK^+濃度を増加させたり, ionophoreを加えて細胞質のCa^<++>を増加させるとGH,PRL,ACTHの分泌は著明に上昇したが, ドーパミンはその効果を阻止した. 2)培養液のCa^<++>を除いて細胞を培養すると, GH,PRL,ACTHの分泌は減少したが, これにドーパミンを加えるとホルモンの分泌は更に減少した. 3)そこで, 実際に, fura-2を用いて細胞内Ca^<++>濃度を測定してみると, ドーパミンは, 基礎値ならびに視床下部ホルモンによる分泌刺激時の細胞内遊離Ca^<++>濃度を低下させた. 4)更に, 12-0-tetradecanoyl phorbol-13-acetate(TPA)あるいは1-oleoy1-2-acetyl-glycerol(OAC)を用いて, Cキナーゼを賦活すると, この場合にもGHとPRLの分泌は増加し, ドーパミンはその効果を抑制した. 5)一方, phos-phodiesterase inhibitor(IBMX,theophylline)の添加も培養細胞からのGHとPRLの分泌を増加させたが, ドーパミンはその効果をブロックしただけでなく, これと平行して細胞内cAMP含量を低下させた. 5)Cキナーゼ賦活時に, 同時に細胞内cAMP含量を調べると, TPAは細胞内cAMP含量も増加させた. ドーパミンは, TPAによるGH, PRL分泌促進作用, cAMP増加作用をともに平行して低下させた. ところが, TPAの場合とは異なり, OAGは, 細胞内cAMPの生成は増加させなかった. 以上の成績から, ヒトの培養下垂体腺腫において, 細胞内遊離Ca^<++>の増加, Cキナーゼの活性化, cAMPの生成はいずれもホルモンの分泌を増加させ, ドーパミンはこれらの細胞内情報伝達物質の作用を抑制して下垂体ホルモンの分泌を低下させることが結論された.
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