分子遺伝学的手技を用いて、【III】型家族性高脂血症の原因であるアポ蛋白Eの異常な遺伝子保有者を早期発見する方法を確立した。 リポE受容体との結合に重要なアミノ酸を含むアポEの主要な対立遺伝子ε3、ε4、【ε^(2*)】、ε2に対する6種類の19量体のオリゴヌクレオチドを合成した。その5′末端にニックトランスレーションにより【^(32)P】を結合させて、標識したプローブを作成した。被験者の白血球からヒト染色体DNAを抽出し、これを制限酵素EcoRIで消化した。先に述べた【^(32)P】で標識したオリゴヌクレオチドをプローブとしてハイブリダイゼイションを行った。オートラジオグラフィーを行ない、ハイブリダイズしたDNA断片を検出した。アミノ酸のコドンに点突然変異があればプローブとはハイブリダイズしないためDNA断片が検出できなかった。 今回検討したアポEの構造異常が推定される部分の合成オリゴヌクレオチドを用いたアポEのアミノ酸組成異常の早期発見は、その診断上、有力な方法であるといえる。しかし、この方法をキット化してどこの施設でも行えるように一般化するためには、オリゴヌクレオチドプローブの感度をあげる工夫が必要である。 また従来知られているアミノ酸組成以外の部分に点突然変異がおき、そのために高脂血症をきたした症例が最近報告された。このような症例の発見にはSP6RNAポリメラーゼと、pSP62プラスミッドを用いてアポEcDNAを鋳型として【^(32)P】標識RNAプローブを作製し、RNaseAで処理する方法を用いる必要があり、現在検討中である。
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