研究概要 |
Dysalbuminemic Euthyroid Hyperiodothyroninemia;type【III】は、3,3´,5-triiodothyronine(【T_3】)に結合増大を示す新しいバリアントアルブミン(ALBvar.)である。本年度の研究は主としてこのALBvar.について検討を行った。臨床上、代謝的に正常であるにもかかわらず、血中【T_3】濃度の著明な上昇、アナログ法のキットで測定した血中遊離【T_3】濃度の著明な(偽)高値で特徴づけられた。このALBvar.は【T_3】に対する親和恒数が5.1×【10^6】【M^(-1)】と正常アルブミンの約8倍に増大し、又thyroxine(【T_4】)に対しても2.5倍増大していた。精製したALBvar.はSDS polyacry amide電気泳動(PAGE)で66Kの位置に1本のバンドとして泳動され、SDS free PAGEではmonomerとdimerに分かれ、正常(N-)ALBとの間に差を認めなかった。電気泳動上ALB分画には正常の2-3倍の【^(125)I】-【T_3】が結合するが、この増大した結合は80mM Barbitone,10mM ANSで抑制された。又、【Cl^-】によっても抑制をうけた。これらの性状は、typeI(FDH)のALBvar.が【T_4】に対して示す性状と非常によく一致し、症候群としての類似性が証明された。精製したALBを【^(125)I】-【T_3】で標識し等電点電気泳動で分画すると、N-ALB,ALBvar.とも8つの【T_3】結合バンドを認め、そのpI(等電点)は両者でそれぞれ一致した。しかし、強い【T_3】結合バンドはN-ALBでpIの高い方(5.63,5.40)に、ALBvar.ではpIの低い方(5.24,5.09)に認められた。内因性のヨードサイロニンを除去すると、特にALBvar.でpIの低い2本のバンドが増強され、又、外因性非標識【T_3】を添加すると、これらのバンドが先に飽和されることより、これらpIの低いバンドは【T_3】に対して親和性の強い成分と考えられた。N-ALBのこれら2本の結合バンドは少量の外因性【T_3】により先に飽和されることより、type【I】の場合と同様、type【III】のALBvarの【T_3】結合の増大も正常にも存在する【T_3】に対して親和性の強いALB成分が量的に増大している結果と推測された。現在、これらdys al buminemic syndromeにおけるiodothyronine結合増大にmixed disulfideの関与があるか否かにつき検討を始めた。
|