研究概要 |
成長ホルモン放出因子(GRF)の分泌機構,作用および診断的応用について研究し、次のような成績を得た。 1.GRFの中枢性分泌調節機構 ラットを用い、視床下部組識灌流または意識下の脳室内注入により検討し、GRFの放出はドパミン,セロトニン,ソマトスタチンなどにより刺激されることを認めた。 2.GRF測定の診断的意義 正常者の血漿GRF濃度は10.3±4.1pg/mlで、性差はないが、臍帯血では63.0±8.4pg/mlと有意に高値であった。GRFには律動性分泌が認められ、夜間の徐波睡眠時に成長ホルモン(GH)の分泌に先行ないし一致して血漿GRFは前値の2-3倍以上に上昇したが、視床下部障害患者ではこれらの変動はみられなかった。運動負荷またはL-dopa経口負荷では血漿GH濃度の上昇に先行し、負荷30〜60分後に頂値を示す血漿GRF濃度の増加がみられ、これらの負荷試験はGRF分泌刺激試験として視床下部下垂体障害患者の診断に有用であることを見出した。しかし、アルギニン負荷では血漿GH濃度は上昇するがGRF濃度に変動はないことから、GRFを介さない機構が考えられた。 3.各種疾患患者におけるGRFの病態生理 視床下部疾患(頭蓋咽頭腫など)ではL-dopaに対してGRFとGHの分泌変動はみられないが、GRFに対するGHの分泌反応は認められた。しかし、下垂体疾患(シーハン症候群等)ではGRFの分泌増加のみが観察され、L-dopa試験がGH分泌不全の障害部位の鑑別に役立つと考えられた。 4.GHRH産生腫瘍 先端巨大症を伴う膵GRF産生腫瘍を発見し、腫瘍摘出後GHとソマトメジンC値の低下を認めた。 5.下垂体性小人症 本症患者の一部はGRF分泌不全によることを見出し、GRF治療の可能性を示した。
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