糖尿病母体からの新生児は、発育過剰、発育遅延、胎児仮死、奇形などの種々の合併症を生じる。この様な合併症を防止するため、きわめて厳格な血糖のコントロ-ルが推奨されている。これはしばしば血糖値の危険を伴うが、低血糖の催奇形性については、ほとんど研究されていない。低血糖の胎児に及ぼす影響を、ratのwhole embryo curture systemを用い、検討した。 低血糖培養液は、ラットにインスリンを注射し、作製した。この低血糖培養液で、培養前半24時間(ラットの妊娠9.5日〜10.5日)培養した時、著しい発育遅延、神経管の閉鎖不全などの奇形の発生を40%の頻度に認めた。これに対し培養後半(ラットの妊娠10.5〜11.5日)に低血糖にさらしても、発育遅延奇形の発生はほとんど認めなかった。培養前半24時間(妊娠9.5〜10.5日)のembryoのエネルギ-産生は嫌気的解糖糸路でなされており、これにより以後はTCAcycleによるそれが徐々に増大する。即ちこの様なembryoが嫌気的解糖経路に依存している時、低血糖にさらすとglyiclysisによりエネルギ-産生が減少し(約40%)、奇形発生に導くことを示した。以上の実験結果から、短時間の低血糖に及ぼす効果を検討した。更に低血糖は通常、過血糖→低血糖を生じるので併せてこの効果も検討した。すなわち正常ラット血清(140mg/dl)および正常ラット血清にgluioseを加えた(600mg/dl)過血糖血清で培養し、そして妊娠10.3日の時期に低血糖に一時間のみさらした。 正常血清→低血糖でも約7%の神経管閉鎖不全を認めた。しかし過血糖血清→低血糖にした時、奇形の発生頻度は増加し、更に強い発育遅延を認めた。
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