研究概要 |
下垂体前葉からのACTH分泌は視床下部で産生後、下垂体門脈系へ放出されるCRF、バゾプレシンならびにカテコラミンにより主に支配されているが、これ以外にも多くの神経ペプチド、活性アミンなどが関与していることが推測されている。ごく最近、Wolskiら、Besedovskyらによりモノカインの代表であるインターロイキン-1(IL-1)にもCRF様作用のあることが報告され、特にIL-1の免疫,感染症あるいは自己免疫疾患での下垂体-副腎皮質系機能促進効果の意義が注目されている。しかしながらIL-1がin vitroでラット下垂体前葉あるいはヒトACTH産生腫瘍からのACTH放出を促進するか否かに関しては明らかにされていない。われわれはラット下垂体前葉およびクッシング病患者から得たACTH産生下垂体腫瘍の灌流系に各種のIL-1製剤およびヒトCRFを添加し、灌流液中へ放出されるACTHをラジオイムノアッセイで測定した。ラット多核白血球由来のIL-1様因子はラット下垂体およびヒトACTH下垂体腫瘍からのACTH放出をほぼ用量反応的に促進した。CRFも同様なACTH放出効果があったが、80℃、15分間加熱したIL-1様因子にはACTH放出効果はみられなかった。ヒト精製IL-1(Genzyme社)もラット下垂体前葉で用量反応的にACTH放出を促進した。マウスIL-1βもラット下垂体前葉からのACTH放出効果がみられた。 要約すると、IL-1はラット下垂体前葉およびヒトACTH産生腫瘍いずれからのACTH放出も促進したことから、IL-1には少くともCRF様効果のあることが明らかになった。今後、ヒトrecombinant IL-1を用いた同様の実験により、IL-1の作用部位、作用機序をさらに明らかにしていく予定である。
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