研究概要 |
GH分泌刺激試験にて正常に反応したいわゆる正常低身長者101例について, GHの作用を仲介する血中ソマトメジンC(SM-C)値を測定したところ, 31例で血中SM-Cは低値を示した. そこでこの31例についてGHの構造異常が存在するか否かGHのレセプター活性及び生物活性を検討した. 4例でレセフプター活性の低下を認め, このうち2例で生物活性の低下を認めた. レセプター活性の低下した3例でSDSIPAGEで検討を行ったが, 従来の22KのhGHの部位とは異なる大きな分子量の部位にhGHの免疫活性を認めた. しかし, これら症例の等電点電気泳動の解析では健常小児の血中hGHと比べ明らかな差異は認められなかった. 血中GH及びSM-Cが高値で低身長を呈したTypeA糖尿病の姉妹2症例についてSM受容体の異常が考えられたため, SM受容体について検討した. 赤血球のSM受容体は2症例とも受容体数の低下を認め, この受容体数の低下が低身長の一因と考えられた. しかし, これら症例の線維芽細胞を培養し体液性の因子を除いた状態ではSM受容体の低下は認められなかった. これらの成績は体内において存在する高インスリン血症がSM受容体を減少させている事を示すものであった. いわゆる正常低身長者25名と下垂体機能低下症4名について24時間にわたりGH分泌動態を検討した. 正常低身長者のうち10名で24時間平均血中GH濃度(平均GH濃度)が3mg/ml未満と低値を示した. 24時間蓄尿中GH値は内因性GH分泌の指標として平均GH濃度(r=0.81,P<0.001)と及び血漿ソマトメジンC値(r=0.67,P<0.001)と有意に相関した. 24時間蓄尿GH値は内因性GH分泌を反映し尿中GH測定が内因性GH分泌を評価する上で有用で簡便かつ実用的であることを示した.
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