研究概要 |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)における血小板抗体の検出法の検討とその対応抗原系につき検討を行った. 血小板結合IgG(PAIgG)は血小板に結合しているIgGを意味し種々の方法で検出されているが, 今回は酵素免疫測定法(ELISA), 免疫膜蛍光法(PSIFT), ロケット免疫電気泳動法(ローレル法)を用いた. ELISAでは91%, PSIFTでは34.1%, ローレル法では56%に陽性を認め, 方法によって検出率に差がある事を示した. これは感度の差にもよるが, ELISA法, ローレル法では可溶化血小板のIgG量を測定しており, 血小板膜結合IgGに加えて血小板に取り込まれたIgGをも合せ測定しているためと考えた. 本症では正常人血小板に比しIgGが高い事は血小板膜抗原を介して或いはFcレセプターを介してIgGを血小板に取り込んでいる可能性が示唆され, 血小板IgGが増加している原因を探る事が必要と考えられた. PAIgGが血小板機能を抑制している症例もあり抗体の血小板機能への影響も今後検討すべき課題である. これら血小板抗体の対応抗原は血清中の血小板抗体(PBIgG)についてイムノブロッティング法と免疫沈降法を用いて行い, 1例がGPIIb, IIIaに対する抗原を認識している事が判明した. 又PAIgGより溶出した抗体はPSIFT陽性を示したが, 対応抗原は溶出液中のIgG量が微量であるために同定出来なかった. 血小板抗体や対応抗原の検索に影響を及ぼす膜蛋白の構造変化について検討し, GPIIb, IIIaについてはCa^<2+>濃度10^<-5>M以上を用いる事がより生理的な条件である事を明らかにした. 同種抗体の血小板対応抗原の多くはHLAが関与している所見を得た. 血小板抗体の骨髄巨核球に及ぼす影響については巨核球が充分量採取されず巨核球の採取条件の検討に終った. ITP症例の脾リンパ球による血小板抗体産生能の検討は現在PWM刺激リンパ球上清を集めており, 進行中である.
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