1.健康人10例、急性白血病10例、慢性骨髄性白血病6例、再生不良性貧血10例から骨髄穿刺にて得られた有核細胞1×【10^6】/mlを25【cm^2】のフラスコに播種し、20%牛胎児血清を刺激因子として培養し、1週に1度培養液の半量交換を行ない、フラスコの底に附着した線維芽細胞をトリプシン処理して別のフラスコに移して継代培養し、3代目以後にてほゞ純化された線維芽細胞が得られた。この線維芽細胞にプレドニンを添加し、1週間培養することにより脂肪細胞を得た。血管内皮細胞は臍帶静脈よりコラゲナーゼ処理により分離作製した。2.これらの間質細胞をペトリ皿の下層にあらかじめ播種して附着させておき、上層に健康人の骨髄単核球を播種して、各種の造血幹細胞のコロニーを形成させ、下層におかれた間質細胞のコロニー形成に与える影響について検討した。健康人の場合、線維芽細胞はコロニー刺激因子非存在下において顆粒球のSpontaneousコロニーが多い時はこれを抑制し、少ない時はこれを増加させた。またコロニー刺激因子存在下ではこれを抑制した。これに対して急性白血病と再生不良性貧血の線維芽細胞は少ないspontaneousコロニーを増加させる能力がなく、その抑制作用は健康人より高度であった。慢性骨髄性白血病の場合は健康人とほゞ同様の作用を示した。健康人の線維芽細胞が脂肪細胞に変化することにより、前述の線維芽細胞の作用は解除された。なお病的状態における脂肪細胞の作用については現在検討中である。健康人の線維芽細胞は赤芽球コロニー、巨核球コロニー、混合コロニーをいずれも抑制し、急性白血病、再生不良性貧血ではその抑制の程度はより高度であった。さらに血管内皮細胞は顆粒状コロニーのみを増加させた。これらの成績は骨髄造血において種々の間質細胞が相互に作用しあって造血を調節していること、また白血病、再生不良性貧血における病態を理解するうえに極めて興味ある所見である。
|