癌関連遺伝子の特異的DNA断片を標識して各種の白血病細胞とin situ hybridizationを行った。DNP標識法はmRNAの発現状態を見るのに適していたが、DNP標識に用いるdinitrobenzaldehydeの不安定性のため得られる結果が安定しないという欠点があった。スルフォン化ではスルフォン化シトシンに対する単クローン抗体が正常組識と反応していると解釈される例がしばしば見られ、結果の判定に迷う場合があった。Histo-in・situ・hybridizationの癌診断への応用には、1).非特異的反応を除去し特異性を高めること、2)安定した結果が得られることの2つの条件が必須である。我々はDNP標識法も、スルフォン化法もこれらの条件を十分満たすことはできないと判断した。これら2つの方法は、DNAに標識を結合させ、この標識を酵素抗体法で検出しているわけであるが、外部からDNAに標識を導入することが、非特異的反応の増加と結果の不安定性を招いていると思われた。そこで、プローブのDNA塩基配列内に存在するチミン(T)に紫外線を照射し、チミンダイマーを形成させ、白血病細胞のサイトスピン標本とin situ hybridization後、チミンダイマーに対する特異抗体でDNAプローブの局在を検出する新しい方法を開発した。この方法によりHL-60白血病細胞及び分裂の盛んな正常組識で、C-mycとPCNA/Cyclin遺伝子DNAをプローブとしてin situ hybridizationを行った。DNP標識法とスルフォン化法で行なわれた同様の実験結果と比較したところ、非特異的に染まる細胞が著明に減少し、チミンダイマー法の特異性の高いことが示された。又、ニトロセルロース膜上の実験結果でも、安定した結果が得られることも示された。
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