研究概要 |
成大肝臓から, コラゲナーゼ潅流法によって採取した肝実質細胞を, コラーゲン被覆したホーケー酸ガラス板上に初代培養を行った. ガラス板は, 巾10cm, 長さ20cmであり, このガラス板を200枚収納する. Lorg-Stroke型人工肝モジュールを作製した. モジュール内の肝細胞は, 栄養培地の潅流条件下培養で全て長期間の生存がみとめられた. 機能的にも, アルブミン合成能, 糖新生能, アンモニア代謝能は, 少なくとも2週間以上維持しうることが確認された. またモジュール内の肝細胞は栄養培地による培養だけではなく, イヌ血漿をもちいた潅流培養によっても, 同様の機能を長期間維持しえた. モジュール内に培養収納された細胞は総重量約70gであり, それを肝全摘下に応用して人工肝としての機能を行った. モジュール内の肝細胞は, プラスマセパレーターによって分離された血漿と, あらかじめリザーバーに蓄えられていた血漿とによって, 毎分約459mlで潅流される. 実験群としては, 1)対照非処置群:(n=6), 2)血漿潅流群, (n=3), 3)人工肝治療群(n=3)の3群を設定し, その血清蛋白, 血液凝固因子活性, 生存時間などを比較検討した. 結果:対照非処置群の生存時間は平均21.5時間, 血漿潅流群では25時間と, 約1日で死亡するのに対し, 人工肝治療群では, 平均53時間, 最長65時間と, 著明な生存時間の延長をみた. また血清蛋白, 凝固因子も, 1, 2群は18時間では, 全摘出前の50%以下になるのに対し, 人工肝群では24時間をすぎても70%以上の値を維持しえた. また血中アンモニアは, 1, 2群とも12時間, 18時間では2000ng/dl以上に上昇したのに対し, 3群では約250ng程度の極めて低値にとどまっていた. 以上より本人工肝の有用性が確認された.
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