研究概要 |
我々は小児固形悪性腫瘍に対しフローサイトメトリーを用いて悪性度の判定と抗癌剤スクリーンニングを行なう事を目的として研究を行なった. 培養神経芽細胞腫細胞株TN-1, TN-2, TOGAWA株を用い, 増殖曲線からと, フローサイトメトリーを用いて求めたDNAヒストグラムからとの2つの方法で制癌剤(MMC, ADR, CDDP)感受性試験を行なった. DNAヒストグラムを用いた方法は迅速でかつほぼ細胞の障害の程度を定量できるが, 細胞が最低1回細胞周期を回転する必要があり, 臨床応用には初代培養の増殖の促進が不可欠である. その為続いて増殖促進因子について検討した. 神経芽腫は骨, 骨髄転移を起こしやすい腫瘍の一つである. 我々は骨髄中の単核球培養液上清中に培養神経芽腫の増殖を有利にすると考えられる因子が存在することを見出した. この因子の活性の一部はGM-CSFによる可能性が示唆されている. また, これは感受性試験に極めて有用であり, この因子の応用により迅速確実な感受性試験が可能になると考えている. ヒト神経芽腫培養細胞株に対して作製に成功したモノクローナル抗体は分化関連抗原であることが示唆された. TN-2株からは神経芽腫と末梢神経に特異的な抗体(MWT-31)と, 比較的神経芽腫に特異的な抗体(T-93-13)が, NB-1からは, 神経芽腫と末梢神経に特異的な抗体(N-14-4)が, GOTO株からは比較的神経芽腫に特異的な抗体(G-16-2-D)が得られた. 神経芽腫組織の膜分画にはT-93-13とN-14-4に反応する抗原が存在した. T-93-13は分子量1万5千以下のガングリオシド分画と反応し, N-14-4はガングリオシド以外の脂質分画とも反応した. T-93-13の抗原はノイラミニダーゼ処理によりN-14-4は過ヨウ素酸化により失活した. MWT-31とN-14-4及びG-16-2-Dの抗原はDB-CAMPなどの添加により増加する. これらの抗体は比較的特異性が高く, 神経芽腫の診断, 治療へ応用しうる.
|