研究概要 |
シクロスポリンの登場により, 臓器移植の成績は飛躍的に向上したが, 拒絶反応による移植臓器廃絶は臓器移植最大の難点であることには変り無く, 免疫応答の制御による, 特異的uresponsivenessの誘導が待たれる. 本研究では免疫応答の結果として出現する, 各種液性因子, 殊にIa抗体に注目してgraft処理及び, レシピエントの免疫応答への効果, 移植臓器拒絶の制御の方法について検索した. イヌ摘出膵を抗Ia抗体(ISCR-3)を含む潅流液で24時間潅流後同種移植し検討してみると, 対照群は12.1±1.6日で拒絶されるのに対し, 抗Ia抗体潅流群も17.5±6.9日で拒絶され, 期待されたほど生着期間の延長はみられず, 2例が23日, 29日と比較的長期間生着した事が注目されたのみであった. しかし同種膵移植に, 抗Ia抗体を全身投与すると, 生着日数28.7±7.7日最大38日と生着延長し, 免疫抑制効果が抗体によるgraft処理に比較し, 著明であった. このことは免疫応答の結果としての抗体が, ホストの免疫応答システムを修飾していると考えられ, 長期生着の際には必ずexpandしている, suppressor cellsの導入, 増殖に関与しているものと考えられる. 移植に於ける免疫応答より産生される各種液性因子が, graftの生着に大きく関与している可能性が示唆されたので, シクロスポリンやFK506で導入される, ラット免疫寛容モデルに於いて, 免疫抑制因子の産生と解析を試みた. 移植心長期生着ラットの脾細胞とのB-Bハイブリドーマ, T-Tハイブリドーマを用いて, 解析を行なったところ, それぞれの上清中に抑制因子を見出した. これらは抗原特異的なものや, 種特異性のもの, 更には広く応答を抑制するもの等多彩であり, これらの詳細な解析により液性因子による免疫応答制御の可能性が示唆された.
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