研究概要 |
慢性閉塞性動脈疾患と脂質異常の関連を検討するにあたり、本年度は当科で扱った閉塞性動脈硬化症(以下A.S.O.)40例について、血中脂質を分析した。測定脂質項目は総コレステロール,トリグリセリド,HDLコレステロール,リポ蛋白分画とした。各項目における異常値の出現頻度はリポ蛋白分画では異常型を示したものが50%,総コレステロール43%,トリグリセリド38%が高値を示した。HDLコレステロールは25%に異常値を示したが、低値を示したものは5%にすぎなかった。 健康対照群とASO群を各年齢層に分けて比較すると総コレステロール値は各年齢層ともASO群でやや高い傾向を認めたが有意差はなく、ASO群の各年齢層間にも差は認められなかった。トリグリセリド値は49歳以下の若年層と60歳代のASO群で対照群に比し、有意に高値であり、他の年齢層でも対称群に比し高値を示す傾向にあった。HDL-ratio(HDL/LDL+VLDL)は動脈硬化症では低下することが多いとされているが、今回の検討では低下傾向は認められなかった。リポ蛋白分画で異常型を示したものは20例でそのうちわけは【II】a型5例,【II】b型7例,【IV】型7例で【II】型と【IV】型を合わせて異常型の95%を占めていた。 今回の検討症例では中枢閉塞型9例,末梢閉塞型は31例と末梢型が多く、総コレステロール値よりトリグリセリド値が高値を示す傾向があり、末梢閉塞型においては高トリグリセリド血症ないし、VLDLコレステロールの増加が関与していることが示唆された。(S.Kume:14th World Congress,International Union of Angiology,Munich,1986,7)
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