研究概要 |
本年度は血中脂質レベルと動脈硬化症との関連および血管吻合部晩期閉塞症におよぼす影響を考案する目的で家兎を用い以下の動物実験を行ない, 血管壁の変化を病理組織学的に検討した. 〔実験1〕動脈硬化症の初期病態は血管内皮細胞障害を諸とする内膜の筋性肥厚と言われている. 我々は予備実験としてStemermanらの方法に準じ, 内皮細胞障害モデルを作製した. その結果, 本方法では内皮障害作製後約2週間で内膜の筋性肥厚はPeakに達することが判明した. 〔実験2〕実験1の結果をもとに, さらに以下の4群モデルを作製し, 血管吻合部と他部位との動脈硬化性変化を検討した. (第1群)内皮障害作製2週間後に血管吻合施行, その後0.1%コレステロール食投与した群(第2群)第一群と同様操作施行後コントロール食投与群(第3群)内皮損傷操作を施行せず血管吻合を行いな0.1%コレステロール食を投与した群(第4群)内皮損傷せず血管吻合を行ないコントロール食を投与したコントロール群 全群血管吻合後3ケ月にて層殺, 吻合部およびその遠位部, 近位部の病理学的変化を検討した. その結果, 第1群では膠原線維の増生を伴った強い内膜肥厚を形成し, 特に吻合部で内腔に強い突出した内膜肥厚を認めた. 第2群では内皮損傷操作による筋性内膜肥厚は認めるも, 第1群のような間質増生は伴わず, 吻合部の突出した内膜肥厚も認められなかった. 第3群では吻合部に局在した内膜肥厚を認めた. 第4群ではすべての部位に有意な内膜肥厚を呈さなかった. コレステロール食投与群の一部のみに謂ゆる脂肪球の蓄積を認めただけであったが, 本実験によりコレステロール負荷は, 初期病態から間質増生を伴う進展した動脈硬化症への移行を促進させ, さらには血管吻合部晩期閉塞症をも惹起する1つの誘因であることが示唆された.
|