研究概要 |
近年,慢性閉塞性動脈疾患に対しては,経皮的血管形成術などのカテーテルを用いた治療が行われているが,施行後3ヶ月以内に約30%の再狭窄が認められているとの報告もある。本年度は,血管内操作に際して起こる血管内皮細胞障害を動物実験モデルを用い作製し,操作後約2週間の血管壁組織変化を検討した。 動物実験モデルは,(1)対照群,(2)PGI_2誘導体投与群,(3)TXA_2合成阻害剤投与群に分け,操作後2週間の血管壁を光顕にて観察,さらに,新生された内膜の肥厚度を比較するため,画像解析装置を用いて,内膜/中膜比を計測した。 1)対照群,内膜肥厚は,損傷後2週間で全例に認められ,限局性肥厚も3群中,最も強く認められた。中膜においても弾性線維の変性が顕著であった 2)3)薬物投与群でも,内膜の肥厚は認められたが,対照群に比し限局性の肥厚は軽度であった。 内膜/中膜比では,対照群との間に,有意差は認められなかったが,内膜の肥厚度は,軽減されており,臨床的に抗血小板剤の投与の有用性が示唆された。今回の実験では,操作後約2週間のモデルを使用したが,より長期の血管壁組織変化に対する検討が今後の課題になると思われる。
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