研究概要 |
Perfluorodecalin(以下FDC)を用いる四肢虚血性潰瘍の治療は、毎日通院可能な外来患者または術前の入院患者に行ってきた。この方法を用いて現在まで8例について潰瘍治療を行った。全例に潰瘍の縮少効果をみとめたが治療期間中に完全治癒をみとめた症例は2例であった。治療効果の最も初期にみられる変化は、潰瘍面の乾燥化で、これは1回投与によっも明らかであった。また、潰瘍のうちでも指趾の尖端にできる潰瘍はやや治癒傾向が遅延する傾向であった。 この治療法を、衛生的かつ連続的に行うために、新しい浴槽の開発につとめた。その改良点は以下の如くであった。(1)FDC液を一定に保つためのサーモスタット(2)酸素気泡装置の改良,(3)FDC液灌流装置,(4)殺菌装置,(5)浮游ゴミの処理装置の改良などがあげられ(1)-(4)については62年3月に実用に耐え得る浴槽が完成した,。(5)については現在製作中である。 61年中に、3例の潰瘍治療を行ったが、特に副作用は認められず、2例が改善、1例が潰瘍の乾燥化のみで上皮の発育がおくれたため血行再建術にきりかえた。 FDC液による治療効果をみるためラウリン酸をラット肢動脈に注入し虚血肢を作成し、その効果を対照群と比較する実験を行った。しかしながら虚血性潰瘍自体の作成が困難であったこと、ラットが長期間の拘束実験に耐えられないことからFDC液浴の効果は判定不能であった。 ヒト静脈片のFDC液による保存効果をみるため、生命保存群との対照実験を行い、高膿度酸素が静脈片内皮細胞によく移行し微細構造が依存されることが判明した。 さらに臨床症例をふやし、かつFDC液の生体への反応をくわしく検討してゆくことが必要と考えられた。
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