研究概要 |
半導体レーザーを用いた微小血管吻合の研究 ラットの腹部大動脈(直径1.5〜2mm)を半導体レーザー(波長890nm190mW/Cm^2、連続波・接触式照射)を用いて4点支持法にて端々吻合した。対照は従来の手縫い吻合により、10-0プロリン糸12針結節にて行ない、両者を比較した。吻合後最長6ヶ月までのfollow-upを行ない、吻合部の開存率、動脈瘤発生率、吻合直後の抗張力、耐圧試験を行なったところ、両者間に有意差はなかった。吻合部の病理組織学的所見では吻合後2週間でレーザー吻合では内皮細胞による吻合部の被覆が完成していたが、対照群では24週後でも縫合糸の血管内腔への突出やそれによる内皮の亀裂像が認められ、また弾性板は寸断されていた。また縫合糸周囲には著明な肉芽形成が認められ、晩期の吻合部狭窄の一因と考えられた。レーザー吻合の吻合機序を調べるべく熱電対式温度測定器を用いてレーザープローベを血管外膜側に接触させ、レーザーを照射した際の内膜側の温度変化を測定した。プローベを接触させると温度は急激に上昇し、5秒後にはほぼ50°C前後で平衡に達した。したがって本レーザーによる吻合部の温度上昇もほぼ同程度のものと考えられる。一般に40〜60°Cの温度領域でcollagen-to-collagen,collagen-to-elastinの結合が起り吻合直後の強度が生まれるといわれており、本レーザーの吻合機序も同様のものと考えられた。吻合直後の透過電顕像でも内弾性板がcollagenの変性した物質を介して対側の弾性板と結合している像が観察されこの説を裏付けるものと考えられる。レーザー静脈吻合については現在、実験進行中であるが、良好な結果が得られつつある。
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