1.ラットの背部に直径1.5cmの円形の皮膚欠損創を作成し、ここに半導体パルスレーザー(波長890nm.5KHz.2mW/cm^2)を2週間連日照射したところ0.63/cm^2(5分間照射)で肉芽形成が最も促進された。このレーザー照射による肉芽形成促進の作用機序を検討するため、対照群、5分照射群、30分照射群を作り、照射開始後5、7、10、14日目に肉芽組織を採取し、コラーゲンタイプを測定した。I型コラーゲンは各群で時間の経過とともに増加したが14日目に5分間照射群では他群に比べて有意に高値を示した。III型コラーゲンは5分照射10日目で有意に高値を示した。またレーザー照射群では、非照射群に比べ、炎症性細胞浸潤が少ない。以上より、レーザー照射による肉芽形成促進の作用機序として、コラーゲンの産生促進、及び炎症の抑制によるコラーゲンの分解抑制があると考えられる。 2.ラットの腹部大動脈(直径1.5〜2mm)を半導体レーザー(波長890nm.190mW/cm^2連続波・接触式照射)を用いて4点支持にて端々吻合した。対照は従来の手縫い吻合により、10ー0プロリン糸12針結節にて行ない、両者を比較した。最長6ケ月の経過観察を行ない、吻合部の開存率、動脈瘤発生率、吻合直後の抗張力、耐圧試験を行なったところ、両者間に有意差はなかった。病理組織学的所見では、吻合後、2週間でレーザー吻合では内皮細胞による吻合部の被覆が完成していたが、対照群では24週後でも縫合糸の血管内腔への突出や内皮の亀裂、弾性板の寸断像が観察された。また、縫合糸周囲には著明な肉芽形成が認められた。レーザー吻合は従来の吻合法に比し、約半分の時間で可能であり、また接触式のレーザー照射方式は、操作性が非常に良く、臨床でも充分に応用しうると考えられた。 3.レーザー静脈吻合については現在実験進行中であるが、良好な結果が得られつつある。
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