研究概要 |
1.ラット同所性肝移植においては, 移植後早期の糖代謝変動, ホルモンレセプター変動を経時的に測定した. つまり, 術直後より7日目までの血中インシュリン, グルカゴン, 移植肝組織中インシュリンレセプター, グルカゴンレセプターを測定し考察を加えた. また, 移植手技上最も困難とされている肝上部下大静脈吻合について, 新しい技法を開発した. これらは第23回日本移植学会で発表した. 2.プタ同所性肝移植では, 臨床肝移植に備えてのトレーニングを兼ねて約80回の移植を行った. 術中術後の全身および肝循環動態, 糖・エネルギー代謝について研究を進め, さらに障害(温阻血)肝移植, living donorよりの部分肝移植について予備実験を行なった. 循環動態の研究では, 動脈圧, 肺動脈圧, 心拍出量, 左房圧, 中心静脈圧, 肝組織血流量を測定し, 術中管理のトレーニングを積むとともに, 各種麻酔法の与える影響について考察を加えた. また, 昭和63年より無肝期体外循環用に, 従来使用していたローラーポンプに換えて, 臨床用のバイオポンプを導入した. 前述した各種モニタリングより, ポンプの循環動態に与える影響を適性流量について検討中である. 糖・エネル率-代謝の研究では, 血中インシュリン, グルカゴン, 乳酸, ピルビン酸, アンモニアなどと肝組織中の代謝律速酵素, 中間体, nucleotideを測定し, 肝移植の代謝系に及ぼす影響について考察を加えた. これらの結果は第23回日本移植学会で発表し, 第88回日本外科学会総会で発表の予定である. また, 脳死の問題に関係なくgraftを獲得することをめざして, 温阻血肝や部分肝の移植の可能性について予備実験を行なった. 温阻血肝移植は可能性はあるが, vabilityの判定が困難なことが課題である. living donorよりの部分肝移植は, 肝静脈再建に課題を残すものの, 小児に対しての臨床応用の可能性は大きい.
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