研究概要 |
末梢動脈血行再建術後の晩期閉塞は, その前病変として再建動脈の内膜肥厚による狭窄が殆んどを占める. この狭窄性病変は, 異常血流条件下(我々の波形分類によるII型波形条件下)を示すものに発生しやすい. そこで, この晩期閉塞の前病変である内膜肥厚の実験的再現を試み, 犬膝窩動脈に分節的閉塞を作り(II型異常血流波形流れ), その中枢側大腿動脈に自家静脈移植を行なった. その結果, 1)移植片内膜に臨床例と類似の著明な内膜肥厚がおこり, この内膜肥厚は血管壁平滑筋細胞の異常増殖によるものであること. 2)移植後早期の内膜肥厚は, 血流条件を正常化することにより, 退縮するものであること等の知見を得た. また, この内膜肥厚に及ぼす血小板の影響をみると, 異常血流条件下では, 正常血流条件下に比し, 移植3日目迄の血小板の内膜への粘着が亢進しており, 移植後早期の血小板粘着亢進による血小板由来の平滑筋細胞増殖因子の関与が示唆された. 一方, Horseradish peroxidase(HRP)を用いた内膜肥厚課程における内膜透過性の検討の結果, 異常血流条件下では, 移植片内膜が内皮細胞に被覆されたにも拘らず, 移植後3週目まで透過性の亢進がみられており, 内膜肥厚には, 血小板由来の平滑筋細胞増殖因子のみならず, 血中成分による増殖刺激反応の関与も推定された. また, 人為的に, 移植後早期の異常血流条件を正常化させると, 移植片内膜への血小板粘着の程度が明らかに抑制されている結果も得ており, 今後, 異常血流条件下における内膜肥厚予防法の確立のために重要な指針を与えるものと考えられた.
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