研究概要 |
肝硬変合併肝癌に対する外科治療を行うさい残存肝予備能の診断は、極めて重要である。本研究においては、肝代謝能(肝ミクロゾーム機能)、肝細網内皮系(RES)機能そして凝血機能などを総合して肝予備能とし肝切除モデルや肝硬変モデルを用い各々の測定法の基礎的検討をおこなった。 1.肝ミクロゾーム機能の測定 トリメタジオン(TMO)代謝の主要臓器を検討するためラットの肝、腎、肺などのミクロゾーム分画のTMO N-demethylase活性を測定した。TMOの代謝は唯一肝でおこなわれ、その代謝産物はジメタジオン(DMO)のみであった。そこでTMOの経口負荷後の血中のTMOとDMO値が肝ミクロゾーム機能を反映しているか否かラットの急性、慢性肝障害モデルや68%肝切除モデルを用い検討した。TMO負荷試験による血中DMO/TMO値は肝のTMO N-demethylase活性、P450量、肝重量などと同様な変動を示し、それは肝のfunctional capacityを診断可能であった。またAntipyrin,Aminopyrin負荷による従来の検査法に比較して、本法は迅速かつ簡便で患者に与える負担も少なく臨床応用が可能である。 2.肝RES機能の測定 フチン酸は肝のRESで貪食される。そこで【^(99m)T_C】フチン酸を靜注後、血中と肝の二つのコンパートメントにおけるフチン酸の薬物動態を、【^(99m)T_C】よりのγ線量を測定した。68%肝切除モデルにおける術後一病日の肝RES機能は術前値の約20%と低値であった。これは同日の肝ミクロゾーム機能より低値であり両機能の関連については今後検討してゆく。また【^(99m)T_C】フチン酸が肝のRESに貪食されるか否かは、オートラジオグラフィーにより現在測定中である。今後さらにDICモデルや急性、慢性肝障害モデルを用い検討してゆく。
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