研究課題
常温下肝阻血の時間的安全許容限界は、適当な肝保護療法を施さない限り45分であることが、確認された。また、肝保護療法として、遮断(肝流入血行)中及びその前後に、カルシウム拮抗剤(ニクェディピン)を静脈より投与したものは、60分間の常温下肝阻血にも十分耐え、生存することが、確認された。この際、常温下肝阻血(60分)において、ニフェディピン使用群と非使用群間には、術後の生存率にしてP<0.01の有意差を認めた。また、術後の肝の損傷程度のよい使標となると思われる血清免脱酵素値は、術後3時間で、ニフェディピン使用群が、非使用群より、有意に(P<0.05)低値を示しニフェディピン使用群の方が、より肝組織の損傷が、低度であることを、示唆していると思われた。同様に、遮断解除直後の血中カルシウム濃度が、ニフェディピン使用群より非使用群において、術前より、低値を示す傾向があったことは、肝阻血による肝組織の損傷に血中のカルシウムが、肝組織中に取り込まれる過程が関与していることを示唆していると思われた。肝流入血行遮断前、中および後における循環動態のモニターにおいては、ニフェディピン非使用群において、心係数、動脈圧および門脈血液量指数がニフェディピン使用群と比し、血液再開後数時間で、有意に低値を示し、肝阻血により肝組織の損傷が、何ものかを介して、実験動物の循環のホメオスターシスを破壊し、動物を死に致らしめるものと思われた。これらよりカルシウム拮抗剤は、常温下肝阻血時の肝保護に有効であると考えられるが、その臨床的応用には、ニフェディピンより、より強力な、カルシウム拮抗剤の開発が重要であると思われる。
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