研究概要 |
ウサギを麻酔下に開腹し、膵管(胆管とは別個に総胆管に開口)に挿管しした細管をT tubeを介して総胆管に合流させ、膵管胆管合流異常を作成した。術後にセクレチン(SC)1U/kg,セルレイン(CRL)100ng/kgを単独または併用して連日2回筋肉内投与した。X線造影または剖検により、胆道系が拡張することが確認された。2ケ月後の平均総胆管径は正常例3.5mmに対し、無刺激群9mm,CRL単独刺激群10mm,SC単独刺激群14mm,SC+CRL併用刺激群25mmであった。阻道拡張は併用刺激群で最も著しく、最大例は 35mmに及んだ。拡張の著明な例では肝外胆道系は屈曲蛇行し、胆嚢には軽度の拡張が認められた。T tube挿入部より十二指腸側の総胆管も拡張していることから、この拡張が単にT tube挿入部の狭窄によるものではないことは明らかである。血中ビリルビン,Al-P,GOT,GPT,アミラーゼ値等は全経過を通じて殆んど変動せず、胆道閉塞や膵炎の症状は認められなかった。 拡張した胆道径と胆道内圧の間には有意の正相関が認められた。拡張胆道内胆汁中にはアミラーゼが高濃度に認められ、トリプシトゲン,キモトリプシノーゲンも高濃度に認められたが、トリプシン,キモトリプシン活性は認められなかった。したがって本モデルでは、膵液は大量に胆管内に流入するが、各種膵酵素の活性化はおきていないと考えられた。 拡張胆管、胆嚢の上皮は剥脱している場合が多く、肝には高度の中心壊死像と線維化が認められた。膵は膵管拡張が著しく、実質には壊死,脱落,脂肪置換が認められた。 以上から、膵管胆管合流異常が長期間存在すると胆道は拡張傾向を呈し、これに膵外分泌の亢進と胆嚢およびOddi筋の収縮亢進が加わると、胆道拡張は増強されることが判明した。膵酵素の活性化は必要でなく、胆道内流量の増加と流出抵抗の増加が主因であった。
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