研究概要 |
ポリ(ADP-リボース)合成酵素阻害剤であるアミノベンズアミドを90%膵切除ラットおよび犬に投与し, その糖尿病発症抑制効果を検討した. ラットでは膵切除3〜7日後に本剤投与群では有意にB細胞のDNA合成か亢進し, 増殖能が上昇した. 1ヶ月, 2ヶ月, 3ヶ月後の血糖値は本剤投与群で有意に糖尿病発症率が低下した. 残存膵B細胞体積も本剤投与群では非投与群にくらべ約5倍に増大しており, 本剤が残存B細胞に対し, 特異的な再生促進効果を発揮したものと考えられた. 本剤による腫瘍, 特にランゲルハンス島腫瘍の発生を, 投与後1年間観察したが, インスリノーマの発生をみとめなかった. 雑種成犬を用い90%膵切除を行なった後, ポリ(ADP-リボース)合成酵素阻害剤であるニコチナマイドを投与した. 投与3ヶ月後のIV-GTTでK値, Insulinogenic Indexは非投与群と比較すると投与群では有意に良好であった. 残存膵のB細胞体積もラットと同様, 非投与群にくらべ, 投与群では有意に増量しており, 犬においてもニコチナマイドがB細胞の機能保持と再生に関与したものと考えられる. 以上よりポリ(ADP-リボース)合成酵素阻害剤はラット, 犬における膵大量切除後発症する糖尿病を抑制することが明らかとなった. さらに本剤による糖尿病発症阻止機構はB細胞に対する特異的再生促進効果とB細胞の機能保持からB細胞の変性崩壊を抑制するためと考えられた.
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