1.臨床:肝切94例中肝不全は18例に発生した。肝不全は術中術後の大量出血(9例)、縫合不全(4例)と肝切除自身による過大侵襲(5例)を契機に発生し、多臓器不全の1つとして出現した。肝切後の血中エンドトキシン(トキシカラー)は、術後1日目をピークに22-160pg/mlにまで上昇し以後減少した。肝不全のうち術後大量出血の一例は出血と共に再上昇し、過大侵襲の二例は術直後の高値が持続した。術直後の血中オプソニン因子(CH_<50>、血漿フィブロネクチン)及び貧食指数K値の低下は肝不全群に著名で、その後の回復も肝不全群ではみられなかった。現在サイトプロテクションと考えられているPGE、及び抗凝固剤としてFOYを投与しているが、肝不全の発生率も低下し良い結果を得つつある。 2.実験:エンドトキシンによる肝細胞障害機序を検討するため以下の実験を行った。Seglenの方法に準じて肝細胞を、Einesisらの方法に準じてKupffer細胞を分離し、肝細胞単独培養群(1×10^8個)と共同培養群を作成しエンドトキシン(20μg/ml)を加え、H^3-leucineの肝細胞の取り込みから蛋白合成を測定した。エンドトキシンの肝細胞障害は肝細胞単独群ではみられずKupffer細胞の存在下で生じた。更にこの肝細胞障害は、SOD、抗TNF抗体、α-tocopherolでは防止されず、Diltiazem(抗Ca拮抗剤)及びDexamethazoneにて防止効果がみられた。即ち、クッパー細胞由来のChemical mediatorであるライソゾーム酵素、IL-1、プロスタグランディン誘導体が、肝細胞障害の誘因になるものと考えられた。
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