研究概要 |
1.閉塞性黄疸家兎に対するglucagon投与:総胆管結紮(BDL)48時間後の家兎にglucagonを0.02mg/kg投与し、血糖,cyclic-AMP,肝energy chargeを測定した。肝energy chargeは対照群の0.82±0.04に比しBDL群では既に0.75±0.09と低下していたがglucagon投与により更に0.49±0.07と著明に低下していた。また血糖は対照群がglucagon投与により前値106±14mg/dlから後値152±25mg/dlと増加したのに対し、BDL群では前値86±12mg/dl;後値86±14mg/dlとglucagonに対する血糖上昇作用が欠如していた。cyclicAMPは対照群では前値40±35pmol/ml、後値1314±237pmol/mlと著増したのに対しBDL群では前値37±14pmol/ml、後値341±189pmol/mlとその上昇は抑制されていた。以上より閉塞性黄疸ではビリルビンがミトコンドリア呼吸鎖のuncouplerとなるためATP産生が低下するため、細胞膜のcyclic-AMPの産生が低下し、glucagonに対する感受性が低下すると考えられた。 2.70%肝切除家兎に対するglucagon投与:70%肝切除24時間後の家兎にglucagon0.02mg/kg投与し、1と同様の項目について検索した。肝energy chargeは0.84から肝切除後24時間では0.77に低下するが1週間以内に前値に回復した。然しglucagon投与により肝energy chargeは前値0.77から0.70に低下した。また血糖、cyclic AMPの上昇は対照群に比し有意に抑制されていた。 3.1、2の結果より障害肝のhormone insensitivityにはcyclic-AMPが関与することが示唆された。 4.臨床例における肝切除術後のglucagon投与:肝切除術後に経日的にglucagonを0.02mg/kg投与し、血糖,cyclicAMP,アミノ酸,血中総胆汁酸の変動を測定した。肝機能障害例ではglucagonに対するalanineの上昇が抑制されることが判明した。またcyclicAMPの上昇作用も抑制されていることが判明した。その他の因子に関しては、現在詳細に解析中である。
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