研究概要 |
ヒト消化器癌の細胞増殖特性を知る目的で行われる^3H-thymidineによるS期細胞標識は, 我々が開発したex vivo臓器灌流法により, より生体に近い状態で行うことが可能となった. また, thymidineの同族体であるbromo-deoxyuridine(BrdU)による免疫組織学的S期細胞標識法は, ^3H-thymidineの場合と同様の結果が得られ, しかも取扱いが簡便である. 本年度は, ヒト大腸癌原発巣22例, 肝転移巣3例, 皮膚転移巣ノ例, その他の悪性疾患3例に対し, BrdUによる標識を行った. BrdUの標識法は, 倫理的問題を考慮し, stageVのみin vivo法, その他の症例は主としてex vivo法とした. 原発巣及び転移巣の標識率の算定には画像解析装置を用いているが, 作業の能率化と計測の客観化のため独自のソフトウェアーを開発した. 大腸癌原発巣の標識率は12.2〜36.1%, 平均値25.2%(n=46)である. 個々の腫瘍間の比較において, 病期分類上stageIV・Vで高い傾向, 組織分化度で高分化腺癌より中分化腺癌で高い傾向, 脈管侵襲の強い症例で高い傾向が認められた. 本研究は開始後間もないため, 予後との比較はなお日時を必要とする. 次に腫瘍内不均一性の検討で, 深層と比較して浅層で高い傾向を認めたが, 均一な標識率を示す症例もみられた. 肝転移巣の標識は計6例となり, 標識率は10.3〜25.4%, 平均値15.5%で原発巣と比較して低い傾向が認められた. また中心部に壊死を伴う症例では表層で高い標識率を示す傾向がみられた. リンパ節転移巣においても同様の結果が得られた. 同一症例でflow cytometryを用いたDNA定量を行い, DNA pleudy patternと標識率との比較も行っているが, これまでのところ有意な相関は得られていない. また一部の症例で, in vivo BrdUおよびex vivo hymidineによる二重染色を施行し, 検討中である.
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