当該年度の最も大きな成果は、直腸癌局所再発の診断を、抗CEAモノクローナル抗体CEA102によりできたことである。局所再発は、血行転移と異なり血清CEA値の上昇は軽度であり、かつ骨盤部CTにおいても術后の線維性、肉芽性変化と再発腫瘍との鑑別が困難で、一般に確定診断は困難である。CTガイド下針生検にても再発が証明できなかった症例に対して、^<131>Iにて標識したCEA102 0.8mC^1を投与し、Scintigraphyにより観察した結果、72時間后に膀胱左縁上部に明瞭な抗体の集積が観察できた。^<131>I Countにより集積化を検討したところ、腫瘍とバックグランドとの比は、72時間後1.65であり、また近接する膀胱との比は72時間後 0.84、96時間后 0.99と上昇した。大腸直腸癌の肝、肺転移は、従来よりある検査にても比較的容易に診断できるが、局所再発は困難であるため、今回CEA102の投与により確定診断ができたことは意義深いと考えられる。さらに抗体の腫瘍への到達性が明らかとなったため、今后送択的化学療法へのモノクローナル抗体の有用性が一層増すものと思われる。一方当方法による画像診断の欠点として、時間を要する、Senstivityの面で劣る、などの問題があるため、F(ab')_2の体内動態につきひきつづき検討を行った。腫瘍・血液比は、whole CEAが5日目に1.19と上限を示したのに対し、F(ab')_2は3日目に1.48と上限を示しており、F(ab')_2の方がより早く腫瘍へ集積し、かつ集積率も高いことが判明した。さらに、腫瘍内への抗体の集積をオートラジオグラフィーにて観察した結果、同様な傾向が示された。本年度は^<123>Iなどの核種の臨床応用を試みる予定であったが、抗体産生に制限があり、次年度を期してさらに鋭意努力したい。
|