消化器癌に対する画像診断技術は飛躍的に発展しているが、腫瘍と直接反応する標識抗体を応用することは、抗原抗体反応という特異な反応を利用するため、質的診断に貢献すると思われる。当教室において、胃癌に対しては胃の癌胎児抗原の性格を有する抗原と反応するGC302(IgG_1、40K)、また大腸癌に対しては、CEAを免疫原としてCEA102(IgG_1、180K)を作製した。臨床応用に先き立ち、ヌードマウス移植下大腸癌の画像診断をFCRを用いて行った。CEA102ー16.2μgの投与后5日目に腫瘍の明瞭な描出が得られた。患者の投与にあたっては、抗体のヴィールス汚染などのないことを確認した。クロラミンT法により標識し、PD-10カラムを用いて調製した。6例の患者に施行したが副作用は一例も認めなかった。上行結腸癌の肝転移、また局所再発例で腫瘍に一致した抗体の集積が認められ、診断を可能としたが、未だ標識率が十分でない場合もありさらに検討する必要がある。このうち局所再発は、血清CEA値は軽度の上昇しか示さず、骨盤部CT所見も術后の線維性変化か再発腫瘍かの鑑別に難渋することがあり、診断は必らずしも容易ではない。本症例はCTガイド下針生検も陰性所見を示したため、本抗体による腫瘍の描出は極めて有意〓であった。以上のごとくモノクローナル抗体を使用する画像診断は、質的診断に優れていることが判明したが、時間を要する、Sensitivityの面で劣るなどの欠点を有している。そこでCEA102のF(ab′)_2分画を作製し、その血中動態、腫瘍への集積率をwhole CEAと比較検討した。F(ab′)_2は2日目にピークを示し、腫瘍の集積にも優れていたため、現在半減期の短かい^<123>I、^<111>In等の核種の使用、およびEmission CTの使用につき検討を行っている。胃癌の画像診断はCEA102の臨床応用を中心に行ったため、ヌードマウス移植胃癌の画像診断の段階まで行った。
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