研究概要 |
(目的)今回、同所性ブタ肝移植後における血清脂質の脂肪酸代謝の変動について検討した。(方法)経時的に動脈血を採取し、血清脂質をFolch法で抽出後、TLCで遊離脂肪酸(FFA),中性脂肪(TG),リン脂質(PL),コレステロール・エステル(CE)に分離,各分画について12種の脂肪酸をHPLC(蛍光法)で測定した。(結果)50分間の無肝期にはFFAが47.5%上昇し、TG(66%),CE(31.6%),PL(27.2%)は減少した。FFAは血流再開後1時間で増加した後、急激に減少し6時間で最低となり、その後増加に転じ18〜24時間で前値に復した。変動したのは総量の約25%を占める【C_(18:1)】であった。TGは血流再開後も減少を続け、9時間で最低となり2日目より急激に上昇した。主として変動したのは総量の約32%を占める【C_(18:1)】であった。移植肝機能が不良例では低下したままであった。PLも血流再開後減少を続け、18時間で最低となり、2日目から上昇したが、【C_(20:4)】は術前値68.9±91Mg/mlから低下を続け、死亡例の多くは20Mg/mlを維持できず死亡した。W-3系高級不飽和脂肪酸は時間経過と共に減少し、3〜4日後の経口摂取開始後も減少を続け、必須脂肪酸であるW-6系も減少を続けた。合成可能なW-9系は逆にその比率が増加した。CEは無肝期から【C_(18:2)】の構成比が増加し、血流再開後2時間をピークとして6時間まで持続した。W-3,W-6系は減少を続け2週間以後はW-9系と量的に逆転した。死亡例の多くはCE中【C_(18:2)】が術前値139.6±25.1Mg/mlから減少を続け40Mg/mlを維持できずに死亡した。必須脂肪酸欠乏をPL以上に強く表わす可能性がある。(考按)血清脂質及び脂肪酸の変動からみると肝移植後早期の1〜6時間はFFAの減少,2日目以後のTGの増加,PL中【C_(20:4)】,CE中【C_(18:2)】の減少が脂肪酸代謝上重要であること、さらに肝移植後2週間の比較的早期に必須脂肪酸欠乏を来す可能性がある。
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