研究概要 |
Ehrlich腹水癌細胞をddgマウス腹腔内に移殖し、37゜C,39゜C,41゜C,42゜Cにてそれぞれ30分間、43゜Cにて20分間全身加温し、加温後直ちに他のマウスに再移殖した(42゜Cでは約50%、43゜Cでは約95%の担療マウスが加温中、あるいは直後に死亡するため)。以後、経時的に再移殖マウスより腹水癌細胞を採取し、1)フローサイトメトリーによるDNAヒストグラムパターンの変化,2)光顕による癌細胞の形態学的変化,3)再移殖マウスの生存率曲線,4)再移殖マウスの腹腔内癌細胞数の経時的変化につき検討した。 (成績)1)DNAヒストグラムパターンの変化からは、41゜C以上の加温群で16C領域の細胞数の増加を認めた。更に温度の上昇と共に、加温後48時間頃より【G_2】+M期への細胞集績を認めたが、120時間後には加温前のヒストグラムパターンに戻る傾向にあった。2)形態学上の変化としては、24時間以降に巨細胞,多核巨細胞の出現を認めたが、120時間後には加温前の形態に近いものが多かった。3)再移殖試験では、43゜C加温群では37゜C加温群(コントロール群)に比べて生存率の延長傾向が見られた。4)腹腔内癌細胞総数の経時的変化では、加温後5日間の軽度の増殖抑制効果が42゜Cおよび43゜C加温群で認められた。(結論)1)41゜C以上の加温で、【G_2】+M期への癌細胞集績がみられ、これは細胞回転の抑制のためと思われた。2)細胞回転抑制の効果は温度の上昇と共に増加したが、43゜C以下ではこれらの変化は可逆的なものと思われた。3)ヒストグラム上16C領域に増加した細胞は多核巨細胞と思われた。4)Ehrlich癌細胞増殖は43゜C20分間加温により抑制されたが、加温後5〜6日でその効果は消失すると思われた。
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