本研究は胆汁うっ滞肝に対し、胆汁酸利胆剤(デビドロコール酸)を投与することにより(1)その還元化能から肝機能を評価すること(2)障害肝に対する利胆効果-治療効果の検討を行うことを目的としている。 従来の胆汁酸測定法では、投与されたデヒドロコール酸の肝での代謝産物を充分に分離し同定或いは定量することが困難であったが、ステロイド骨格のケト基をハイドロキシムに置換、ジメチルエチルシリルエーテル誘導体化し、ガスクロマトグラフ-質量分析計を用いる分析系を確立した。その結果、従来はその存在が間接的に推測されていたに過ぎない新たな代謝産物を含み6種類の代謝産物を分離同定しえた。また内部標準物質を加えることにより定量も可能となった。ラットを用い実験的に閉塞性黄疸を作製し、閉塞解除後にデヒドロコール酸を投与した場合、正常ラットに比ベ利胆効果が遅延し、これら代謝産物の胆汁中排泄も遷延するが、ケト基の位置により還元化能が正常と異なることも明らかとなり障害肝の機能評価法としての有用性が示唆された。人においても同様の知見が得られつつあり臨床応用も可能と考えられる。 一方、胆汁うっ滞患者では異常胆汁酸や胆汁アルコールの尿中排泄が増加することが知られており、著者らは3B-hydroxy-5-cholenic acidのラジオイムノアッセイによる測定法を開発し、この尿中排泄量が胆汁うっ滞をよく反映する事を明らかにした。また尿中胆汁アルコールの分析により、閉塞性黄疸解除後にも、胆汁うっ滞により惹起された胆汁酸代謝異常が遷延することを明らかにした。今後、臨床的に肝機能評価法として或いは治療法としての胆汁酸利胆剤の有用性を検討する際に、還元化能や胆汁分泌能に加え、3B-hydroxy-5-cholenic acidや胆汁アルコールの尿中排泄も指標となる可能性があり、あわせて検討する予定である。
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