研究概要 |
〈はしがき〉食道癌治療のNew strategyを考える上において, 食道組織中のアンドロゲン受容体蛋白に着目し, 抗アンドロゲン剤のラット発癌実験におよぼす影響について検討を行った. 〈研究成果〉1.AMN誘発ラット実験食道癌の発癌率 食道組織標本のH-E染色像を検討すると, 雄ラット(n=80)を用いたAMN誘発実験食道癌の発癌率は, AMN投与8週8.3%, 10週37.5%, 12週73.3%, 14週73.3%, 16週100%, 18週77.7%であり, 有用な発癌実験モデルであると考えられた. 2.発癌率におよぼす去勢の影響 去勢雄ラット(n=66)の発癌率を検討すると, AMNを単独投与した非去勢雄ラットの発癌率に比して統計学的に有意差は認められず, 今回の検討からは発癌率におよぼす去勢の影響は明らかとはならなかった. 3.発癌率におよぼすFlutamideの影響 Flutamide投与雄ラット(n=40)の発癌率を検討すると, AMNを単独投与した非去勢雄ラットに比して有意に低い発癌率を示し(P<0.05), Flutamideの雄ラットに対する発癌抑制効果が考えられた. 4.去勢ラット発癌率におよぼすFlutamideの影響 Flutamide投与去勢雄ラット(n=66)の発癌率を検討すると, AMNを単独投与した非去勢雄ラットに比して有意に低い発癌率を示し(P<0.01), Flutamideの去勢雄ラットに対する発癌抑制効果が考えられた. 〈おわりに〉以上よりAMN誘発ラット実験食道癌において抗アンドロゲン剤の一つであるFlutamideの発癌抑制効果が認められたことから, 抗アンドロゲン剤の食道癌治療応用の可能性が示唆され, 実験食道癌を用いた基礎的研究の必要性が考えられた.
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