研究概要 |
62年度は, ラット酢酸潰瘍モデルを用い, 胃潰瘍の難治化因子について分析を行った. このラット酢酸潰瘍の経過は, 酢酸を胃漿膜塗布後3日から5日で潰瘍が形成されるが, この潰瘍形成期, その後の1週から2週で潰瘍面積が著名に縮小される縮小期, 以降徐々に縮小する治癒期, 8週を過ぎて潰瘍が再び大きくなる再発期にわけられる. この8週以降の再発期の注目し, 潰瘍の難治化について検討した. 組織学的にみると, 主として肉芽組織のうえに再生した粘膜が剥離脱落して潰瘍が大きくなり, さらに胃液にさらされる肉芽層は変性壊死を起こすために, 粘膜の再生が妨げられるものと考えられた. この時期の潰瘍底ですが, ヒトの潰瘍底にみられるような強い循環障害がみられる一方, 肉芽中には多数の新生血管が観察できた. このモデルに, ある種の抗潰瘍薬を投与しておくと, 明らかに潰瘍の再発が抑制され, 潰瘍底における肉芽中の新生血管の分布は豊富に認められ潰瘍辺縁の胃粘膜血流も明らかに増加するという結果が得られた. このことから再発期における潰瘍部の血流が, その治癒に重要な因子であると考えた. すなわち, 潰瘍部の循環障害の程度により, 潰瘍は難治化を示すのではないかということが考えられた. 今年度予定していたPotential difference, コラーゲン, 粘液等については検討中です.
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