研究課題
本年度は正常胸腺について研究し、特に年令的構造変化を明らかにした。1才から70才迄の82例を検索した。Leu1陽性細胞は髄質優位とされるが2才児迄は陽性細胞は皮質に多いが、髄質の方が陽性度が高い。その後も年令が長じるに従い髄質が皮質とも優位となる。Leu4陽性細胞も2才児迄は皮質優位だが、その後は髄質優位となる。Leu2a陽性細胞は主として皮質に見い出される。髄質にも少数認められる。萎縮が始まっても皮質が残存している時は皮質に認められる。萎縮が強くなり皮・髄が明らかでなくなると少数散在性に認められるのみとなる。Leu3a陽性細胞は始めは皮質に多いが髄質にも多く出現してくるようになる。やがて皮質が萎縮して来たあとも髄質に残存する。萎縮が強くなると髄質にも散在性に認めるのみとなる。皮質T細胞はOKT6がその特異的マーカーとされ、陽性細胞は全ての年令層で皮質優位であるが、髄質にも少数認められた。2才児迄は髄質に小巣状或は散在性にOKT6陽性を認め、これらには細胞形態からリンパ球もあると考えられる。それ以後の年令層では髄質の陽性細胞は樹枝状細胞を除いては著減する。皮質が萎縮性になっても皮質が残存している間はOKT6は存続する。HLA-DR陽性細胞は髄質に多数認められ、皮質では網状に皮質全層が染色され、上皮性細網細胞のネットワークを示すが、萎縮すると減少するが最後迄存続する。ケラチン陽性上皮細胞の密度は髄質に高く、網状に連なって、皮質では散在性に、皮質最外層では連鎖状に認められた。B1、B2、B3陽性細胞は、その細胞形態から上皮性細網細胞が主体を占め、B細胞は殆んどなかった。S-100陽性細胞は樹枝状細胞で、主として髄質に認められ、皮質にはごく少数散在性に認めた。年令的変化は胸腺の微小環境とT細胞両者に認められた。
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