研究概要 |
(1)新しいECCO_2Rシステムの確立:成人のECCO_2Rのシステムでは生体で産生されるCO_2を人工肺で除去するのに1.5L/min以上のバイパス流量が必要とされている. このバイパス流量を減少させることができれば, 経皮的cannulation, 溶血の防止, システムの簡素化など種々の利点があると考えられる. そこで従来のECCO_2R回路に再循環回路を組み込むことによってシステムのCO_2除去能の向上を計った. 模擬回路による検定の結果, 本システムは0.5-1.0L/minの低流量で生体のCO_2除去が可能と評価され, 臨床的に充分摘要可能と考えられた. (2)ECMOの適応:臨床例でECMOの適応を検討するために, A-aDo_2が500mmHg以上を示す呼吸不全患者91例を対象として機械的人工呼吸の治療成績を検討した. 呼吸不全による死亡は21例(23.3%)であった. 人工呼吸による管理を行ってもA-aDo_2250mmHg以上が4日間以上続く症例はその94%が呼吸不全で死亡した. また, 呼吸不全による死亡例の死啌率は平均74.2%で生存例に比べて有意に高値であった. 人工呼吸による管理を行ってもA-aDo_2が改善しない場合や死啌率が高度な場合は速やかにECMOの摘要を考慮すべきと考えられた. (3)ECCO_2Rにおける白血球活性化:体外循環においては異物と血液の接触により補体白血球系が活性化され, 活性化白血球は肺血管床にsequestrationを生じ組織障害をきたすことが指摘されている. ECCO_2Rにおいても同様の問題が考えられるので, 実験的ECCO_2Rにおいて肺leukosequestrationを中心に白血球動態を検討した. 更に白血球活性化を抑制するcAMP phoshpodiesterase inhibotr(DN-9693)が白血球動態に与える影響を検討した. ECCO_2R早期に肺leukocyte sequestrationが生じ有意な白血球減少をきたした. 30分のECCO_2Rによって白血球数は約50%に減少した. DN-9693投与下のECCO_2Rでは肺leukosequestrationと白血球減少は認められず, DN-9693は肺血管床に対する白血球の作用を抑制する可能性が示された.
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