研究概要 |
ACIラットをdonor,LEWラットをrecipientとした同種心移植モデルを用い。急性拒絶反応に伴うThromboxane(Tx)およびその拮抗物質である【PGI_2】の動態を、それぞれの安定代謝産物である。【TxB_2】,【6keto-PGF_(1α)】の尿中排泄量から追求し、さらにTx産生を阻害するOKY-046,aspirin-DI-lysine(ASA)が急性拒絶反応に及ぼす影響を検討した。 結果:尿中【TxB_2】排泄量は移植後早期および移植心拒絶時期に上昇し、尿中【6keto-PGF_(1α)】排泄量は移植後早期にのみ上昇した。またTx産生阻害剤を用いた群では移植心生着期間が有意に延長し、全経過にわたり尿中【TxB_2】排泄量は著明に低値であった。無処置群が拒絶される時期(移植後6日目)にあわせて各群の一部から摘出された移植心の組織所見では、血管周囲単核球浸潤,間質浮腫等の急性拒絶反応所見は各群ともにみられたが、心筋内出血,筋層内動脈の閉塞は無処置群のみに認められた。 考察ならびに結論:移植後早期にみられたTx排泄量の増加は、対照とした同種同系移植群(LEW-LEW)にも認められたため、おそらくsurgical traumaによるものと考えられた。しかしこの時期には、同時に拮抗する【6keto-PGF_(1α)】排泄量も増加しており、Txによる組織障害を防止しているものと思われた。これに対して無処置群の拒絶反応に伴うTxの上昇に対しては【6keto-PGF_(1α)】は上昇せず、Txの組織障害作用をより強化している可能性があると考えられた。またTx産生阻害剤を用いた群でもTx排泄量の増加を伴わない遷延性拒絶反応が全例にみられたことから、Txはおそらく早期拒絶反応に強く関与しているものと推定され、移植心の組織所見から血管病変の成立に深くかかわっていると思われた。本研究者らは今後、酵素抗体法等の手技を用いてTxの組織内分布の解析を試み、Txの拒絶反応における役割についてさらに検討を進める予定である。
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