研究概要 |
開心術後の輸血後肝炎発症率は高率であり、その予防に最大限の努力を払う必要がある。非A非B型肝炎の原因が不明であるため治療法、予防法は確立されておらず、各種の自家血輸血を始めとした総合的輸血後肝炎予防対策が不可欠である。 1.術前自家血輸血:患者本人からの冷凍自家血保存は適応を比較的riskの良い単弁置換術まで拡大し、輸血後肝炎はかなりの高率で予防でき、極めて有用な方法と思われた。 2.術中自家血輸血: (1)人工心肺残留血濃縮再利用は溶血,赤血球抵抗,腎機能,血液節減効果免疫学的検討など44例の検討から安全性を確認し、自家血輸血として有用な手段であることを示し、ほぼ全例に施行している。殊に、輸血後肝炎予防効果はフエレーシス血漿との併用で肝炎発症は44.7%から14.3%へ有意に減少した。 (2)Sorenson systemによる術中自家血輸血は12例の胸部大動脈瘤手術に施行、溶血,腎機能,凝固系,塞柱症,感染などの面を検討し安全性を確認したが、心臓手術への適応拡大は極めて希な血液型を有した症例に限った。 3.術後自家血輸血:術後縦隔ドレーン血再利用による術後自家血輸血は前述の症例にlife-savingな効果を得ることができた。縦隔ドレーン血性状の検討では、十分な活性凝固時間の延長、細菌培養陰性から、安全性に問題はないと考えられるが、溶血が認められる点、凝固活性化物質の存在の可能性が問題となる。 4.その他:今後、血液節減からみたcardioplegia法の見直しをblood cardioplegiaとcrystalloid cardioplegiaの比較から行う。
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