研究分担者 |
木下 正之 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 室員 (00183301)
野田 裕幸 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 室員 (20183551)
松田 武久 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 室長 (60142189)
高野 久輝 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 部長 (60028595)
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研究概要 |
1.急性実験による検討:雑種成犬6頭に対し、冠動脈左前下行枝を結紮し、心筋梗塞モデルを作成した。うち3頭に左心補助人工心臓(LVAD)を梗塞直後より適用し、適用しなかった群と、心機能及び心筋代謝における違いを比較検討した。心筋代謝は梗塞30分後梗塞中央部より心筋全層を生検し、液体クロマトグラフィーにより高エネルギーリン酸(CrP,ATP,ADP,AMP)の測定を行ない検討した。LVAD適用群では、100%の流量補助を行なう事が可能であり、左室拡張末期圧は0mmHgになった。非適用群では左室拡張末期圧の上昇を認めた。CrP,ATP,ATP/ADPは適用群がそれぞれ11.8±5.5μmol/gdry wt.,16.1±0.6μmol/gdrywt.,8.0±3.4に対し、非適用群は2.7±1.6μmol/g dry wt.,10.5±3.2μmol/g dry wt.,2.6±1.0と定値であった。これは、LVADの駆動が虚血による心筋障害を代謝面からも軽減する事を示している。 2.慢性実験による検討:心臓手術後の両心不全に対しLVAD及び両心補助人工心臓(BVAD)を適用した場合の循環管理および治療効果に関して、成山羊を用いた慢性実験で検討した。常温下30〜60分の大動脈遮断により作成した両心不全に対し、LVADあるいはBVADを適用した。LVAD群8頭では循環維持のために持続的な容量負荷を必要としたが、うち3頭は2〜3病日に右心不全より回復し、13〜18病日にLVADより離脱した。BVAD群2頭では過大な容量負荷も軽度であった。両心不全においては、容量負荷によりLVADのみによる循環維持が可能であるが、右心不全が遷延する場合には、BVADはより循環管理が容易で強力な循環維持手段として治療効果を期待できる。なお、心機能回復の成否は心筋損傷の程度に左右されると考えられた。
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