研究概要 |
Wistar系雄ラット脳を初代培養し、その定常期の培養細胞からsodium dodecyl sulfate(SDS)とphenolでDNAを抽出し、制限酵素EcoRIによってヒトの組織と異なる370塩基対(bp)断片を得た。しかし、次の制限酵素の再切断で適当なDNA断片が得られず、種々の制限酵素で検討した結果、Hind【III】の切断後370bpはHae【III】で167bpと203bpに分離され、この研究に適するDNA断片であることが判明した。そこで、370bpをα-【^(32)P】-dATPで両端標識後にHae【III】で再切断し、末端標識した167bpと203bpをMaxam & Gilbert塩基配列法に従ってポリアクルアミドゲル電気泳動をおこない、それぞれの断片の塩基配列を決定した。つぎに、黄色球菌の細胞蛋白成分中から、ウラシル・DNA・グルコシダーゼ,ピリミヂン・ダイマー・グルコシダーゼなどのDNA回復酵素を含む硫安分画を抽出し、末端標識のDNA断片と反応させ、損傷部位をオートラジオグラフィで検討した。DNA損傷を示唆する特異的なバンドはみられず、また、ピペリヂンのβ-elumination作用でリン酸ジエステル結合を断って損傷を顕在化したが、損傷部位は同定できなかった。これらの結果から、培養細胞では検討した損傷が形成されないか、もしくは、損傷がすみやかに回復されることが推察された。今後、抽出した硫安分画のDNA回復酵素活性などについてさらに検討が必要である。
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